はちど

ボードゲームのレビューなど。

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ボードゲームとビデオゲーム。あるいは、AIと人間。

      2013/10/27

Hachiです。
引き続きボードゲームの話で恐縮ですが、
ちょっと気になる記事を見つけたので、取り上げてみたいと思います。

追記

下記の記事と直接の関係はないのですが、
記事を掲載した直後のことだったので補足として。

先日の第2回電王戦最終局の結果にて、
世界で初めて将棋でコンピュータが人間に勝利しました。
参考:第2回電王戦とは (ダイニカイデンオウセンとは) [単語記事] – ニコニコ大百科

この結果は、AI研究史に常に登場する、
世界で初めてチェスで人間を負かせたDeep Blue
同等に扱われてもいい、歴史的な事柄だと思います。
これからのAI研究の更なる発展に期待します。

はじめに

Twitterで長くフォローしている某氏のblogで、気になる記事がありました。

対戦ゲームというのはシステムを使い倒し、マップを研究し倒し、最強の組み合わせで、最善の行動をとり合うゲームである。チャトランガから派生した数多の二人零和有限確定完全情報ゲームであれば「読みの深さ」「戦略」の競い合いとなったが、昨今の電子ゲームでは準備の段階から戦闘が既に始まっている。
[出典: プレイヤーを攻撃する前にコントローラを置くべきいくつかの理由。 – セラミックロケッツ!]

FPSに造詣の深い方なので、一般化しようとしてついFPSに寄ってる感もありますが。
完全情報ゲームを使ったAIの研究を大学でやっていた私としては、
ゲームの世界に限定せず、もっと大風呂敷広げれば面白そうだなぁと思うんです。

「対戦ゲームに限らず、人の関係する事象というものは、
自分が勝つ(得をする)ために最善の行動を取り合う『ゲーム』である。」

昨今の電子ゲームと二人零和有限確定完全情報ゲームの違いは、
勝つためのスキルが反射神経か読みの深さかの違いしかないと思います。
その違いがあった上で、別に後者が蚊帳の外にされるまでもなく、
彼の主張は適応されるのではないか、と考えます。
# 無駄に大風呂敷を広げているのだから、一部を蚊帳の外にしてはいけません。

ひっかかった部分

そもそも、この後に展開されている記事の内容は、
ゲームシステム上で強さに差がある装備や戦法があるから、
強いの使われたらそりゃ勝てないよ、という話になっています。

…それって、戦略ではないのでしょうか。
戦略を考えるタイミングがゲーム中からゲーム前になっただけであって、
本質的には何も違いはないように感じます。

「戦略を立てる」ことで得られるものは「最善の行動」です。
「最善の行動」の結果が「勝利(得をすること)」です。
やっぱり、何も違いません。

AIが実世界で行っているゲーム

たとえば、自動お掃除ロボットが現在では実用化されています。
あのロボットに搭載されているAIもまた、
最善の行動を取るようなお掃除戦略がプログラムされています。

お掃除ロボットの思考するべきポイントは2つです。

1. 床をまんべんなく掃除すること。
これはお掃除ロボットの宿命です。
四角いところを丸く掃くお掃除ロボットはポンコツです。
しかし、ロボットには床の広さが把握できません。
広すぎて完璧に掃除するまで時間が掛かるようでは、
これも優秀なお掃除ロボットとは言えません。

2. 段差に落ちないこと。
自分より高い段差はただの障害物ですが、
自分より低い段差は落ちたら自力ではのぼれません。
すなわち「落ちたらゲームオーバー」と言えます。
それはいわば底なし沼です。強酸の池です。溶岩です。奈落です。小学生ですね。

つまり、自動お掃除ロボットは、
未知の広さの床を、段差トラップに引っかからずに全て踏むように動き続ける
というゲームを強いられているんださせられているといえます。
そして、ロボットはそのゲームに勝利するため、
最善の行動を取るようにプログラムされています。
これが実世界でAIが取る戦略です。

人間が取る戦略

人間もまた、日々の生活で常に戦略を立てて行動しています。

AI的に言えば、たとえば、
「水が飲みたいので蛇口から水を汲んで飲む」ことすらも
いちいち戦略を立てて行動しています。
このゲームの勝利条件は喉の渇きを潤すことです。

大抵の人は、部屋の台所にあるキッチンへ行って
戸棚のコップを手に取り、目前の蛇口から水を汲んで
その場で飲み干すでしょう。
これで勝利条件達成。あなたのチームの勝ちです!

では、なぜ部屋の台所へ行きましたか?
(なぜ隣家の台所ではないのですか?)
なぜ戸棚から「そのコップ」を取りましたか?
(なぜ「同じ戸棚にあるご飯茶碗」ではないのですか?)
なぜ目前の蛇口から水を汲みましたか?
(なぜ近所の公園の水飲み場ではないのですか?)
なぜその場で飲み干しましたか?
(なぜ水の入ったコップを持って元の場所に戻ってこなかったのですか?)

AIは、上記の「なぜ」に対して答えを出す必要があります。
答えが出ない場合、AIは最善の行動を取ることができず、
人の目で見て無駄な行動を取ってしまいます。
人間であれば、最善の行動は無意識のうちに判断し、
無意識のうちに実行しているのです。

何が言いたいの(まとめ)

AIが行っているのは、人間が無意識に行っている行動を
プログラム(手続き)として抽象化することです。
抽象化の際、最善手を選ぶために必要としない
雑多な世界の大部分は、理解しなくてよいとします。
つまり、必要最低限の世界の枠で思考を縛っています。

一方で、現実を抽象化してシステムという枠で縛り
勝利条件を明確にして娯楽としたものをゲームと呼びます。
現在のゲームは、映像表現がリアルになってきているとはいえ、
ゲームである以上はシステムの制約を受けています。

勝利条件を満たすために手っ取り早い方法が
世界を縛る制約の上で確かに存在するのなら、
それを選ぶのは「戦略を立てていれば」当然のことです。
ゲーム上で、それが娯楽として成り立っていないと思うのであれば、
投げ出すのが最良の方法に違いないと私も思います。

補足。
冒頭の記事に引っかかった最大のポイントです。

二人零和有限確定完全情報ゲームでは
FPSのようにシステム上絶対的に強いパターンは無く
読み合いが楽しいのだ、FPSはそうではない、という論調ですが、
システム上で一方的に強い(必ず勝てる)方法は、
完全情報ゲームにも存在します。

現状AIがそこまで至っていないゲームがあるのは、
読むべき手数が多すぎて最適解を出せていないだけです。
もし最適解が知れ渡ってしまったゲームがあるとするなら、
それは娯楽として成立しなくなり、廃れてしまっているはずです。

だから、システム上どうしても勝てない状態が発生するゲームは、
対戦が娯楽とはなり得ないのですから、
同じように廃れていって構わないと思った次第です。

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